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講演会のおはなし① ~きもの産地の危機~
京都の蒸し暑い夏の始まりを告げるように、梅雨の時期を迎えました。
5月の終わりは、燦々と照りつける太陽がとてもまぶしく、一足早い真夏のようでしたね。
みなさま、熱中症にはお気を付けくださいね。
さて、今回は先日、ご縁あって東京の講演会でお話したことを皆さまにもお伝えしたいと思います。
5月7日、浅草で開かれた会には、若手の呉服問屋さんが多くお集まり頂きました。私からは、呉服産地の危機的状況と、私が思うこれからのきものの広め方についてお話しました。
今月はまず、産地の現状から。
和装業界は、ご想像のとおり年を追うごとに縮小しています。
京都織物卸商業組合に加盟されている企業さんも、ここ40年ほどで5分の1ほどに減ってしまいました。
この現状をなんとかしたいというのも、私が研究生活をはじめるきっかけでした。
染める前のきものの生地―白生地織りも同じく減産し続けています。
日本で一番白生地の生産数が多い京丹後地域では、昭和48年のピーク時には996万反(2013年、「丹後地域の現状と課題」)あったのに、年々減り続け昨年(2014年)は42万反。今年もまた減るでしょう。
当然、今日友禅染の生産量もこの10年で半減してしまいました。(2013年、京友禅協同組合連合会)
もともと、日本産のシルクは希少です。
世界シェアでは1%にも満たないでしょうか。
世界の約70%以上のシルクは中国産。品質も良いし、種類も多いので、うちもお世話になっています。それから約15%はインド産です。(2013年 杭州電子科技大学 范調べ)
ちなみにブラジルでもシルク生産が行われていますが、日系移民のご先祖さんが養蚕業を持ち込んだのが始まりで、こちらは海外の高級ブランドのスカーフなどに使われています。
そんなわけですから、生地の大半は輸入に頼っています。このところの円安で原材料が高騰したので、生産者のふところを直撃しているのですよね。
どうにも値上げをしなければいけなくなったりして、きものをお売りすることがまた難しくなってしまいました。
ところで、生産量が減ると、何が起こるのでしょうか。
一言で言うと、「きもの作りがしんどくなる」のです。
売れなくなるから、職人さんの賃金が下がる。
(京丹後市の白生地の織り手さんの賃金が、京都の最低賃金を下回るところまで行ってしまいました)
こうなると転業したり、あとつぎがいなくなる。
すると繁忙期には慢性的な人手不足になり、生産納期が伸びていく。
少し前にはひと月で出来上がった商品が、三月かかるようになりました。早く作ろうにも、もう人手がなくてできないのです。
きものの消費が減るにつれて、こうしてどんどんきもの作りが大変になり、作り手が減り、製品価格にも影響して、また売りづらくなる…という悪循環が起こっているのです。
少し熱くなってしまいました。
来月は、ではこれからきものをどのようにお客様にお届けし、職人の技術や産業を守っていくのか。
私が考えていることをお話したいと思います。
もうしばらく、お付き合いくださいませ。
お楽しみに!