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- はんなりLab.
2015年3月6日
減りゆく「はんなり」の職人芸
底冷えのする京都の冬も、どうやら峠を越えたようです。
梅、桜とはなやかに京都が彩られる季節も目の前ですね。
さて、今月は1月にお話していたでんぷん糊の習得がちょっと難しいのですよ、というお話。
でんぷん糊はもち米を原料にして作られ、かなりしっかりした粘度があります。
板ゴムをガソリンやベンジンでとかして作るゴム糊の、実に30倍粘度が高いのです。
さて、細かく繊細な友禅柄に糊を置いていく時、硬い糊とやわらかい糊、どちらが扱いやすいと思いますか?
そう、やわらかい方が手の細かな動きが伝わりやすいので簡単。(とは言っても修行は必要ですけれども)実際、いま京都の手描き友禅の90%にはゴム糊が使われています。
硬くて、にじみやすいでんぷん糊をぎゅっと絞り出しながら、芸術性も表現できるまで、習得には10年かかると言われています。
全ての糊置き職人はゴム糊を扱えますが、でんぷん糊を扱える職人はぐっと少なく、それだけにでんぷん糊のきものにも希少価値が出ます。
しかも10年以上のキャリアを持つ職人の仕事ですから、熟練度も高くてより上質な「はんなり感」を出せるのです。
糊置きの工程は、いわば図柄という「芸術」を「工業製品」に変えるとても重要な工程。
今きものに関わる私たちは、このでんぷん糊の技術を伝え、職人さんを育てること、でんぷん糊ではなくても同じような風合いが出せる技術の開発をしていかなくてはなりません。
私の研究にも、熱が入るというものです。
来月は、ひとつ研究にまつわるご報告ができるかと。
お楽しみに!