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「見立て」の科学(1)「良いきもの」の目利きポイント
街のあちらこちらで紫陽花の柔らかな青を目にする季節になりました。
6月からはきものも麻や呂など、涼しげな夏物が登場します。
一年の中で短い期間しか袖を通すことができないからこそ、思う存分身にまとっていただきたいですね。
さて、去る6月9日に高槻市の市民講座「匠の目線‐実演、伝統の技」でお話しさせていただきました。
「京友禅染の見立て ―ベテランバイヤーの眼球の動きを科学する―」ということで、どのような観点からきものの目利きをしているのかをお話ししました。講義の最後には、眼球動作解析システムで私の目線をリアルタイムでスクリーンに映し、何を見ているのかみなさんに見ていただく実演つきです。
己の目線がバレバレになるというのは、少々気恥ずかしいものですね・・・。
さて、まず今回はこちらでお話しした「見立てのポイント」をご紹介します。
私たちが見立ての際に重要視しているのは、主に5つあります。
【1】 図案がイキイキしているか
【2】 仕立て後の構図の良しあし
全体的なデザインの評価を行います。見立てる人の感性や好みにも影響されますが、
前身頃や胸のあたりにポイントとなる図柄が出ているか、配置に流れやアクセントがあるかなど、重点的に見るポイントは決まってきます。
また図柄を見ながら、似合う年齢や体の大きさも考え始めています。
【3】 ボカシが美しいか
はんなり度合いを決める、糊置きが大きく関わってくる分野ですね。
また、地色のグラデーションがきれいにできているかも見ます。
【4】 図柄の中のボカシが美しいか
図柄の中のグラデーションは、実はパッと見てわかる色数の倍くらいの染料を使って表現しています。色数をかけたほうが仕上がりが美しく、手間をかけたきものとか否かはこういったところに現れます。
【5】 刺繍が美しく施されているか
刺繍を入れると図柄が立体的になり、きものに奥行きが出て華やぎが増します。
金糸・銀糸がどれくらい使われているか…等も値付けには重要ですね。
ほか、白生地のグレードや染色方法など、長い年月をかけて身に着けた業界知識を総動員して行うのが「見立て」です。
ではこちらのポイントをふまえて、次回は見立てに必要な知識をおさらいいたしましょうか。
お楽しみに!