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きもの生地の可能性を拓く、新しい素材開発のお話(2)
霜月に入り、ようやっと「涼しさ」が「寒さ」に変わってまいりました。
ここから一気に都の秋が華やぐ季節ですね。きもので紅葉狩りをされる方と、今年はどれくらいお目にかかれるでしょうか。楽しみです。
さて、前回に続き、アーティフィシャルプラスチック(ここでは、友禅染めを挟み込んだ強化プラスチックのこと)についてお話ししましょう。
学会で発表してまいりました、「光の透過性の評価」についてです。
※研究の概要については、先月の「きもの生地の可能性を拓く、新しい素材開発のお話(1)」をご覧ください。
友禅のきもの生地を挟み込んだ照明を作る、そのためには「どんな生地が一番照明に適した商品になるか」を知りたいと思いました。
そこで今回は、白いちりめん生地の向こう側から光を当てたとき、見え方にどのような差が出るかを調べました。
調べたのは次の5種類です。
- シルク古代ちりめん
- シルク古代ちりめん重め
- シルク一越ちりめん
- シルク楊柳ちりめん
- ポリエステルちりめん
これに、比較用として何もない透明ガラスを試験片に加えて実験しました。
その結果、
- 同じ白色ちりめんでも、厚みや生地の構造の違いで透過した後の明るさが変化する
- ちりめんを挿入することで、光が拡散し、一点がぴかっと光っていた明かりが、ちりめんを通して見るとふんわりした光に見えるようになる
- 光の拡散効果はちりめんによって違いがあり、シルク楊柳ちりめんが最も光をふんわり見せてくれる
- シルクちりめんとポリエステルちりめんだと、シルクの方が明かりが暗くならない
ということがわかりました。
照明を作るなら、カバーになる素材は電球の光を効率よく通し、また広い範囲を明るくできるものでなければなりません。
今回の実験で、シルク楊柳ちりめんは照明を作るのに適した生地だということがわかりました。
ちなみに、実験では光源にLEDライトを使っています。
エコ意識の高まりとともに、今後使われる家庭がどんどん増えていくと考えているのですが、LEDライトの光って「直進性」なのです。
つまり、手元だとか一か所を照らすには優秀なのですが、お部屋全体を照らすには一工夫がいります。
光を拡散させるちりめん生地を使った照明は、LEDライトが使われる未来ともとっても相性が良いんですよ。
すこし専門的なお話になってしまいましたが、これが今回国際学会で発表してきたことです。
友禅のあかりをみなさまの元へお届けできるように、引き続き研究にはげみます。
さて、次回はまた、染めに欠かせない糊の研究についてまたお話ししたいと思います。
お楽しみに!