- トップ
- はんなりLab.
熟練の見立てを追う(2)視線と思考
梅の花が咲き誇り、季節は春へと移り始めているこの頃。
陽の光も心なしかやわらぎ、季節を先取りして袖を通していた春のきものに空気が追い付いてきたように思います。
さて、前回から引き続き、「見立ての科学」に連なる研究についてお話いたします。
前回は実験の手順をお話しましたので、いよいよ今回は今分かっている結果をお話しようと思います。
まず視線の実験では、二つの着物を使い、見立てをする人がどこに注目しているのかを調べました。
ご覧のように、赤い部分が最も視線を集めた部分です。
どちらも図柄に沿って視線が集約されているのが一目瞭然です。
実際、見立て時間の約87%を図柄の見立てに費やしていました。
次に、見立て時に考えていることを全て話してもらい、何について最も思考を巡らせているのかを調べた結果です。
ご覧のように、デザイン=図柄について触れる言葉がずば抜けて多い傾向がわかりました。
しかし「図」だけを見て判断しているのではなく、色やきものの状態、消費者の動向など様々な観点から総合的に考えて図柄の見立てを行っているということも、お話を分析して分かりました。
「言葉にしないとわからない」ことは、本当にたくさんありますね。
最後に、「視線」「言葉」を総合的に分析すると
・熟練者が行う見立ては図柄の主要な部分に重点が置かれる
・熟練者は図柄を重視しているが、風合いや市場の動向などを関連付け総合的な判断を下している
ということが分かりました。
今回は熟練の方のみを対象にしたので、今後は初心者の方などにも協力していただき、比較研究を進めていきたいなぁと考えております。
さて、これまでお付き合いいただいてきたはんなりブログですが、私の研究にこちらでのお話が追いつかれてしまいました。
そんなわけで、もう少し実験が進んでかたちになるまで、小休止させていただきます。
のんびり気長にお待ちください。
来月からは「商品ブログ」を充実させ、きものをたくさんご紹介していきますので、「はんなりしてるなぁ」「これはどんな染め方かな」などとご覧いただければ嬉しく思います。
来月からも、よろしくお願いします。