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「見立て」の科学(4)反物を目利きする
残暑厳しい中、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
私も夏の最中は暑さにやられてしまいましたが、これから夏のお疲れも出てくる頃。
ですが季節が移ろう最中こそ、きものは帯や小物との組み合わせの妙を楽しめるとき。
このおもしろい時間を満喫いただくためにも、ご自愛くださいませ。
それでは今回は「『見立て』の科学」の最終回です。
実験の様子です。
写真にはありませんが、モニターには私の視野が表示されていて、私の視線が赤いポインターで表示されます。
あとから自分で自分の視線を見るというのは、発見も多いですが不思議な気分です。
前回は仕立ての終わったきものの目利きをご紹介しました。今回は、反物を目利きする時、バイヤーがチェックするポイントをご紹介いたしましょう。
染めや生地などへの評価は仕立てたものを見る時と変わりません。
1、【小紋、無地の場合】染色方法と技術を見る
写真一番左の、総柄小紋の反物がありますね。
こういったものの場合、表から図柄をパッと見ただけでは型友禅なのか、機械捺染・スクリーン捺染なのか分かりません。
反物の端を見れば、「●●染」と記載されているのですが、私たちはまず裏返しにします。
裏に染め色が通っていたら型友禅、何もなければ機械で染めたものと考えていただいて間違いありません。
さらに、良質な型友禅を見分けるポイントがあります。
型友禅は性質上、必ず柄の継ぎ目が出てきます。裏面に目を凝らすと、うっすらこの継ぎ目が筋状についているのが分かりますよ。しかし、ズレなく型を継いでいくのは非常に難しく、表面にズレが見当たらないというのは高度な職人技で、私たちも高く評価をしています。
※ただし、「剣先」と呼ばれる柄のズレやわずかな空白が中央あたりに必ず一か所存在します。
これは反物を二つ折りにして一気に染めていくので、折り返しの輪の部分だけは型を合わせることができないためです。
2、【留袖、附下の場合】仕立てを想像する
反物の状態では、仕立てたきものを見ていた時とは違い、「どこにどの図柄が配置されるのか」を頭の中で組み立てながら考えねばなりません。
写真の中央と右側にある反物がそれにあたります。
もちろん反物に絵付けをする際、好きな場所に図柄を描いているわけではなく、上前、後ろ、袖など決まった位置があります。私たちバイヤーは、反物を広げて簡単に柄あわせをし、デザインを確認しています。ですからパーツごとの絵付け位置の知識が無ければ目利きはできません。
ほか、図柄やきものの用途によって、いわゆる「売れ筋商品になるか」も私たちは念頭においています。
ですが、どんな時も一番に評価したいと思っているのは「職人さんの手仕事」です。
培ってきた技術を惜しげなく注ぎ込み、丁寧に作られたもの。その価値を正しく評価できるバイヤーでありたいと思います。
さて、次回はまた新しい研究のお話しをしたいと思っています。
お楽しみに!