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講演会のおはなし② ~きものづくりのこれから~
今回は、先月のつづき。
きもの作りがしんどくなる中で、われわれがどう戦っていけば良いのか?
一個人として、思い描いていることをお話したいと思います。
まず、お客様がどんなきものを求めていらっしゃるのか、私たちはよくよく考えねばなりません。
着物を着る方が減ったとは言っても、日本には、お仕事柄年中きものをお召しになる方がいらっしゃいます。では、一般の女性は冠婚葬祭以外でどのような時ならきものに手を伸ばしてくれるのか、ここをいかに提案していけるかがが勝負です。
つまりは洋服と勝負していかなくてはならないということ。
洋服を着るシーンに和服を提案し、塗り替えるくらいの気持ちで戦っていかなくてはと思っています。
今、じつは和服だけでなく、アパレル業界全体が苦しいのですよね。
海外のファストファッションの流入で、販売単価が下がって国内メーカーさんも、みんなしんどいんです。
ですが、入学式や卒業式、七五三に出席するお母様に、きれいなスーツではなくきものをチョイスしていただけるように頑張らなくてはと思います。このシーンは、少し上等な和服を着るのに、ほんとうにぴったりですから。
次に、どんな状況になっても我々は産地と技術を守っていく努力をしなくてはなりません。
京友禅の生産には、閑散期と繁忙期があります。
先月お話したように、人手不足もあって、繁忙期は納期がとんでもなく長くなってしまいますが、夏の閑散期にはいつも産地の職人さんは頭をかかえています。
京友禅は受注生産が多いので、なかなか生地のストックができないのですが、うちでは受注を予測してできるだけ一年中安定的にお仕事が回るようにしています。
収入を安定させることで職人さんの技術が守れるなら、問屋も、小売店も、業界全部で真剣にきものを売り込むイベントやキャンペーンなど、あらゆる手立てに真剣になる。
みんなで産地を支え、職人さんと技術を守り、質のよいきものを生み出し続けていきたいですね。
そして、きものが好きで、わたしの拙い文をここまで読んでくださった方。
きものの生産数は、紬のように限られる時代になっています。だからこそ、誰もが良いと認める商品にはなかなか出会えなくなっていきます。
だから、もし明日どこかのお店で出逢ったきものが「すばらしい」と思ったら、ぜひ手にとっていただきたいと思います。
ひとりでも多くのみなさまに、よいきものに触れていただき、きものに目を向けていただく。
そのために、私たちは今までどおり真摯にものづくりに向き合っていきます。
さて、来月はわたしがきもののためにできることの一つ、研究のお話に戻りましょう。
学会で、タイのクラビ島に行った時のおはなしです。
お楽しみに!